時鐘江戸俤(ときのかね えどのおもかげ)

 
 

『時鐘江戸俤』の制作は、版元のディレクションのもと、絵師のマテウシュ・ウルバノヴィチ氏が浮世絵の版下絵(原画)を描きおこすことから始まります。できあがった版下絵は彫師:三代目関岡扇令氏へと引き継がれ、約2ヶ月かけて版木を彫る作業がすすめられました。彫師から摺師:伊藤達也氏へと版木が渡ると、いよいよ和紙のうえに川越の風景が再現され、薄い色から濃い色へと、少しずつ、丁寧に色が摺り重ねられます。使用した和紙は、福井県の手漉き和紙、越前生漉奉書。版木の上で何度も色を摺り重ねてもやぶれない、強さとしなやかさを兼ね備えています。

川越市のシンボル「時の鐘」。特に東から西へと望むアングルは「時の鐘」がより美しく見え、川越市に住む人々が愛着をもっている風景です。何人もの職人の手によって、それを名所絵と完成させました。

 
 

『時鐘江戸俤』 作品紹介

絵師:マテウシュ・ウルバノヴィチ
彫師:三代目関岡扇令
摺師:伊藤達也
年代:2021年

川越は、江戸からおよそ 11里の城下町。今も、江戸情緒を残す蔵造りが美しい。1里は、 約4kmだから、半刻(はんとき:約1時間)もあれば歩けます。昔の人の感覚なら、11里は、 そんなに遠くはありません。1800年頃から、江戸で、「焼き芋屋」が大流行します。安くて 美味い川越の芋は「川越の本場もの」として、江戸っ子に人気がありました。しかし、重くてかさばる荷を運ぶには陸路は困難であり、「新河岸川舟運」が活用されました。江戸と川越 を結ぶ水路です。江戸の文化が直接川越に伝えられ、今も脈々と息づいています。


「快晴」と「夕暮」について

浮世絵の風景は「名所絵」といいます。 絵を観れば地名が判ります。「小江戸」として親しまれている川越の城下町に、ひときわ 高くそびえる「時の鐘」の櫓。町に鳴り響く鐘の音が、四百年もの長い間、人々に時を知らせてきました。この現代の「名所絵」を「藍摺絵(あいずりえ)」として制作し、題して「時鐘江戸俤(ときのかね えどのおもかげ)」としました。

「藍摺絵」とは「藍色」の濃淡だけで表現した木版画です。藍摺の団扇絵も、粋で涼しさを誘う夏の必需品となります。ごく僅かに「薄紅」を使う趣向も江戸時代からあるので、昼間 の風景は藍摺で雲の白さを、夕方の風景は薄紅を流した夕焼け空を、摺の違いで、楽しめるようにしました。夕焼けの薄紅は、濃くならないように摺るのが重要です。絵を観ているうちに茜空が、次第に赤くなってゆくように感じるのが不思議です。夏の風景を特徴づける空高く湧き立つ入道雲には「きめ出し」と言われる浮世絵独特の摺りの技術を採用し、立体的な表情をもたせ、柔らかなタッチに仕上げています。


価格(税込)

「快晴」:55,000円 限定100枚
「夕暮」:77,000円 限定20枚

作品仕様

サイズ:中判 24.2 x 18.5 cm
材質/用紙:奉書紙「越前生漉奉書」

※注意事項
・各作品に絵師の直筆サインとエディションNo.が入っております(エディションNo.の選択は出来ません)。
・各作品に鑑定書を付属致します。
・江戸時代から、江戸っ子は、「すべてオリジナル」として、浮世絵を楽しんでいました。UKIYO-E PROJECTはそれに倣い「一枚一枚すべてがオリジナル」と考えています。
・作品は特注の紙たとう(専用ケース)に入れた後、厳重に梱包しお送りします。
・額装をご希望の方は、オプションでお選び頂けます。


職人紹介

絵師:マテウシュ・ウルバノヴィチ

1986年 ポーランド生まれ 東京在住
神戸芸術工科大学で漫画やアニメーションを研究し、卒業後、 2013年にアニメーションスタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」へ入社。『花とアリス殺人事件』『君の名は。』など数多くの背景美術を担当。
2017年に独立。Webアニメーション『すすめ、カロリーナ』で監督、脚本、背景担当するなど、幅広い分野で活躍中。著書に『東京店構え マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集』(エムディエヌコーポレーション)、『東京夜行 マテウシュ・ウルバノヴィチ作品集Ⅱ』(前出)がある。

https://mateuszurbanowicz.com/

彫師:三代目関岡扇令

1957年 東京生まれ 荒川区在住
摺師の家系に生まれたが、父・二代目扇令の勧めにより19歳で彫師の道に入り、大倉半兵衛氏に弟子入り。7年の修行を積み、2013年10月に「三代目関岡扇令」を襲名。
38年ものキャリアによる経験と実績から、原画に忠実に彫る高い技巧に加え、原画の甘い線を補完する彫りをこなす創造的な手腕をもつ。浮世絵の古典的なデザインのほか、新版画や現代版画といった新しいデザインの彫り作業にも次々とチャレンジしている。また、後世の彫師育成のため、積極的に弟子を受け入れている。

摺師:伊藤達也

1965年 東京生まれ 根津在住
1985年、20歳で幾馬系四代目伊藤智郎の後を継ぎ、師匠小川文彦の元で約3年修行。1995年に東京都優秀技能者知事賞を受賞。
その後20年以上にわたり、日本、オーストリア、ハンガリー、フランス、オーストラリア、ワシントンなど、世界各地の美術館や博物館、文化関連の施設にて摺の実演およびワークショップを開催し、摺の技術や浮世絵の魅力を幅広く伝えている。


順序摺

右にスライドして摺の工程をご覧いただけます。

 
 

クラフトビールメーカーCOEDOとのコラボレーション

 
 

埼玉県川越市を拠点とする日本のクラフトビールメーカーCOEDO (株式会社協同商事)とのコラボレーション企画として、『時鐘江戶俤』からインスピレーションを得たビールを限定醸造しました。COEDOは、厳選した素材を用い、日本の水と職人の手によって世界最高水準のビールを醸しています。浮世絵の職人と、COEDOのビール職人。共通しているのは、先人たちの知恵や技術への敬意と、そして、日本の文化を継承・発信していきたいという思いです。今回のコラボレーションでは『時鐘江戶俤』の「快晴」と「夕暮」をラベルに用い、かつ、夏にふさわしい爽やかな喉越しのビールに仕上がりました。

 
 

COEDOのクラフトビール醸造所は埼玉県東松山市の緑豊かな丘の上に位置しています。強烈なる個性の追求ではなく、細部にまで目をくばり繊細なバランスをとることがCOEDOの醸造哲学。麦やホップなどを目で見て、香りを嗅ぎ、手で触って質感を確かめるところから醸造を始め、温度管理や品質チェックを徹底しながら、ビールを「育てる」という気持ちを大切にしながら完成させていきます。

日本の伝統工芸である浮世絵とのコラボレーションとあり、まず選んだ素材が、日本発酵文化の礎で国菌でもある麹でした。麹は、ビールの重要な醸造工程である発酵に役立つだけでなく、口の中で広がる奥行きのある風味を生み出します。さらに、日本伝統の柑橘である柚子を使い、爽やかな香りを加えました。ビアスタイルは、すっきりとした飲み心地で人気のあるIPA (Japanese Style IPA 4.5%) にしています。

4種類のホップからはトロピカルフルーツ、マンゴーなどフルーティーで甘いアロマが生まれ、さらに、柚子の爽やかさも加わり、重層的な香りと味わいが口の中で弾けます。糖の分解を助ける米麹を使用しているので、飲み口はドライで軽やか。よく冷やして飲むと、すっきりとした喉越しを楽しめる、夏にぴったりなビールです。また、明るく透き通った黄金色の液体は、暑い夏の日でも涼しげな気分にさせてくれます。

            ©︎COEDOBREWERY

COEDOについて

プレミアムクラフトビールへ

「小さな醸造所だからできる職人の手仕込みによるものづくりと、ブラウマイスターから継承した正統なクラフトマンシップによって、2006年、COEDOは観光土産の「地ビール」としてではなく、「クラフトビール」という新たな概念を日本の皆さんにご提案しはじめました。
ビールのすばらしさと、COEDOの想いを「Beer Beautiful」という言葉に込めて、ビールの「伝道士」として、皆さんへビールとともにある人生の楽しみをお伝えしています。」ーCOEDOブルワリー

公式HP: https://www.coedobrewery.com
Instagram: https://www.instagram.com/coedobrewery

※2023年10月6日 順次出荷開始

写真:Kuroshiro Studio
文:吉田彩乃(コラボレーション企画部分)